この事業では、子ども達に様々なことを多面的にとらえることができる創造性や、課題を見つけ解決案を考える課題発見・解決力を育むことを目的としています。そして、実現の可否だけではなく、子ども達に大人がしっかりと向き合う姿を見せ続けることもこの事業の目的としています。
子ども達は、「地域への愛着を育む事業」やコミュニティ・スクールを通し、小学校では気付きや学びを町長へ伝える「太陽への手紙」、中学校では総合的な学習の時間で考えた「地域活性化案」を町へ届けています。しかし、子ども達の声が全てそのまま実現されるわけではありません。着目点はすばらしいものの、実現が困難で埋もれてしまいがちな提案もありました。
そんな中、どうしたら町を活性化できるか検討していた町の大人は、子ども達ならではの視点で考えた意見を、できる限り全て受けとめようと動き出しました。これが「子どもの想い実現ワークショップ」です。
行政や教育、民間に携わる大人達が月に一度集まり、子ども達の提案にそれぞれの立場や視点で向き合い、「子どもの想いの実現」への道をつくっています。
子ども達の想いがつまった地域活性化案は、地元食材を活用した弁当やスイーツ、地域キャラクターの誕生、新しいイベントなど、直接的な町おこしの手段として大きな成果をあげています。
地域活性化案を考える過程では、町の大人が「産業講演会」を実施し、情報の提供や、アイディアの出し方、発表方法など、教科授業では補えない部分での学習のサポートをしています。中学生は、町の課題を見つけ、解決案を考えるという経験を得ることで、今後自分自身が困難にぶつかった時にそれを乗り越えるための生きる力を養います。自分たちの提案の実現を意識することで、日常の教科授業の重要性にも気付き、必要なスキルを教科授業で身につけようという意識が芽生えます。
そして、中学校を卒業した子ども達が今度は大人として実現する側に回るきっかけとするため、平成24年からは成人式の場を借りて、子どもの想い実現事業の進捗・結果報告を実施しています。
小・中学校の様々な活動を通して生きる力を身につけた卒業生達の内には、これからも町のために何かしたいという自主性が育まれています。現在、浦幌町内には高校がありませんが、町外に出た高校生と町が引き続き関わり続けていける、新たな取り組みも始まっています。
地域活性化に向けた提案は全て子ども達自身の想いに任せ、提案そのものには大人は干渉しないことでその気持ちを最大限尊重します。この段階で大人はサポート役に徹し、子ども達がその想いを表現するために必要なサポートだけを提供します。
「地域活性化案発表会」はうらほろスタイルのプロジェクトを通して培った想いを町の人々に伝える大切な場です。発表会は広く一般町民に公開されます。実現を強く意識した発表に、大人達も実現に向けた真剣な質問を投げかけ、町の課題と将来像を共有していきます。
子ども達の提案を受け止めた大人達は、実現に向けて世代、立場を超えて協力し合います。「子どもの想い実現ワークショップ」はそのための大切な場であるとともに提案と町民の間のコーディネート役を担っています。こうした過程を経て、様々な想いが実現されていきます。
子ども達のアイディアは時として大人の想像を超え、創造性豊かなものからシビアに現状を切り取りその問題の解決に取り組んだものなど非常に多岐に渡っています。子どもの想い実現ワークショップのメンバーも職業や趣味、経験を生かし毎年なされる提案を実現しようと毎月集まっています。子どもたちが考えた企画を大人が真剣に受け止め、実現させていく。そんな背中を見せ続ける事で子供たちが将来どこにいても浦幌を意識し、自分の夢や人の想いの実現に積極的になり、出来ればその思いを胸にこの生まれ育った町に帰って来て欲しいと願います。また、子どもから大人まで世代を超えて町の未来を共に考える事が出来る機会という意味では、町おこしとしても重要な意味を持つ場です。企画提案をしてくれた子どもが次はそれを実現する側としてワークショップに参加し、世代交代と世代間交流を重ねてていくことで浦幌の未来を創る。そんな場になればと思います。
子どもの想い実現ワークショップ 座長 髙室 智全
浦幌町生まれ、浦幌育ちの僕は「浦幌町」という町がものすごく大好きです。全力でぶつかり、地元で挑戦したい。そう思って今は浦幌で就職し活動しています。しかし、もちろん生まれてからずっと大好きというわけではなく、いくつかのきっかけがありました。そのきっかけのひとつが「子どもの想い実現ワークショップ」でした。
はじめは小学生。当時少年団で私に剣道を教えてくれていた髙室さんが「子どもの想い実現ワークショップ」の座長を務めているということを知りました。その後、中学3年生になり、「地域活性化案発表会」で「子どもの想い実現ワークショップ」について詳しく教えてもらう時間があり、活性化案で僕たち中学生(当時)が考えた案を大人が全力で実現しようとしてくれるということを知りました。
隣町の高校へ進学し、同時に僕は「浦幌部」を立ち上げました。「浦幌にはこんな全力で向き合ってくれる大人がいっぱいいる」と、活動を全力で応援してくれる大人がたくさんいることを改めて実感しました。そんな高校生の時にはじめて僕自身も「子どもの想い実現ワークショップ」に参加しました。
町外の専門学校へ進学後も、夏休みに帰省したときには、直接参加したり、コロナ禍でもオンラインで積極的に参加させてもらいました。
髙室座長をはじめ、浦幌にかっこいい大人がたくさんいる。自分が大好きな浦幌町に対してここまで全力な人がいることがいかに幸せか。ここまで続いていることへの感謝と驚きでいっぱいです。
今は社会人として、浦幌町という町で大人に対して案を出していた僕が今度は実現側へ。浦幌に住んでいる仲間たちも誘って、子どもたちの夢をかなえていきたいと思います。
子どもの想い実現ワークショップ 小倉 理記也